YouTuberワンコ
清川 玲
<あらすじ>
就活生・榊羽衣は上手く就職活動が進まず、夜遅くまで作業をする毎日を送っていた。榊家の飼い犬・マーロも、忙しい家族に構ってもらえず、不満を抱えていた。
ある日、公園で捨てられていた謎のグミを食べた事で突然マーロが喋り始め、家族と共に見たYouTubeの動画をきっかけに自分のチャンネルを立ち上げ配信を行うようになる。不安を感じる羽衣と度々ぶつかりながらも、配信を続けていく。
しかし、羽衣の内定通知書を含めた私物を配信されてしまい、羽衣はマーロを家から追い出す。マーロはチャットでの友人の犬達の元へ身を寄せようとするも、動物を売買する組織に誘拐される。
行方不明のマーロを探していた羽衣は、現れたネズミに導かれASSCという動物達の安全を守る組織の本部に向かう。救出作戦は成功し、羽衣達家族との再会を果たす。マーロは謝罪及びお礼の動画を上げた後、チャンネルを削除する。
それから数年後、次の特集動画の取材にマーロ達が訪れていた。
アンタレスへの道標
柏崎 茜
<あらすじ>
自信をなくし孤独感を常に抱いていた主人公の懐。父親の慎が開発した小型時空転送装置『フロノス』を誤って起動してしまい、五百年後の世界にタイムスリップしてしまう。タイムスリップした先で突如として現れた男たちに襲われてしまう懐。男たちを追ってきたリハクにより助けられる。行き先と制限時間を知ると途方に暮れてしまう懐。そんな懐を旅に連れていくリハク。ある日、お互いの目標を話すと友情が芽生える。次第に懐が抱えていた孤独感が薄れていく。一方で、男たちのリーダーであるイシイチは過去への羨望から『フロノス』を手に入れることを画策していた。彼らにより、リハクは重傷を負い、懐は拐かされてしまう。懐が絶体絶命のときに、仲間を連れて駆けつけるリハク。激闘の末、『フロノス』を取り返し懐は元の時代に戻る。懐は五百年後にいるリハクに思いを馳せ、慎の研究チームの仲間に未来まで残る桜について聞く。そして遠い未来で、年老いたリハクは桜の樹の前に立っていた。
怪獣解放戦線
角田 勇樹
<あらすじ>
自主制作映画『怪獣解放戦線』の企画始動を目の前にした樋引春生、泉恵一、丸谷飛鳥、長谷部ゆうきの四人はサークルに美術部の白川侑芽を迎える。物語の結末に納得がいかない脚本担当の泉は撮影が始まっても推敲を続けていた。着ぐるみが完成し、撮影は特撮パートへ踏み込んでいく。ところが、樋引達が作った怪獣が本当に現れてしまう。怪獣災害により丸谷が死に、責任を感じた樋引は撮影を中止する。しかし、怪獣は予想外の行動をする。怪獣からの被害を食い止めるため、怪獣が出現してから姿を消した白川が何かを知っていると考えた樋引達は白川を探す。白川を追いかけた末に、泉は白川と樋引の秘密、怪獣と世界と自分にまつわる真実を知ってしまう。再び現れる怪獣に泉は樋引の残した模型で立ち向かっていく。思いの丈を全て吐き出した泉は怪獣を殺し、物語に終止符を打つ。
スーパーウーマンズ
丹羽 真沙希
<あらすじ>
専業主婦の恵子と妙子は、近所のスーパーで会うスーパー仲間だ。ある日、二人はスーパーで試食品を大量に食べてしまった。すると、恵子は怪力に、妙子は口から火を噴けるようになった。そんな二人の前に怪獣が現れ、二人は訳も分からず怪獣を倒す。それを見ていたヒーロー博士は、彼女たちにスーツや発明品を提供してくれた。博士の手助けを受けながら、二人は町に現れる怪獣たちを次々に倒していく。ある時、妙子は戦いの最中に死人を出してしまい、自分に自信がなくなってしまう。しばらく休暇をとった妙子だったが、息子の佑樹が突然姿を消すのをきっかけに戦いに戻る。最後のボスはスーパーの店長である恭平だった。恭平は自分の家族が殺されたことをきっかけに、人間を滅ぼす計画をしており、それを邪魔する恵子と妙子に腹を立てて彼女たちを攻撃した。恵子と妙子は恭平との戦いに勝利すると、恭平がいなくなった後のスーパーを二人仲良く経営するのだった。
NOBODY
中里 若葉
<あらすじ>
多様な生き方や選択肢が謳われるようになった現代社会。大学生のいずみ(22)も、様々な情報が氾濫する中、ごく普通の日常を送っていた。しかしある日、図書館から帰ってくると、自分の部屋が空っぽなことに気がつく。いずみが元恋人と別れたことを知らずに同棲を始めると思い込んだ両親が、部屋を片付けていたのだ。思いがけず居場所を失ったいずみは、友人のツテで、ひと夏を、朝子(23)とりょう(24)との三人で過ごすことになる。
そこで、朝子とりょうの友人である聖花(25)と出会い、彼女の自由な振る舞いに心惹かれるいずみ。また、街に一軒しかない古本屋で働く大学院生のとおる(25)とも出会い、都心から離れた新しい家での生活や新しい人々との出会いによって、自らの中に眠っていた様々な感情に翻弄され始める。
空に沈む方舟
笹川 美波
<あらすじ>
大部分が水没し、隕石の飛来が増加している地球の滅亡がほとんど確定された世界。残された人口の殆どは脳とわずかな臓器だけの状態でシェルターに入り、バーチャル世界の中で生きている。バーチャル世界に入ることができずに現実の地球で生きているわずかな人間の1人、音楽好きな少年のソラはある日自殺を試みるが、突然現れた喋らない少年のカモメに止められてカモメの船に連れ去られる。カモメはソラのファンであり、再びソラに音楽をさせようと世界に残された楽器や音を探す航海を始める。訪れる場所で残された人々と出会い、別れながらソラとカモメは船に乗って世界が終わるまで旅をし続ける。
まだ君を知らない
福岡 佐和子
<あらすじ>
とある喫茶店に届いた忘れ物。エアコンのリモコンに、ヘアカラー用ブラシ、ミョウガの食品サンプル、スパナ がくっついたこれは一体誰が何のために……?
波立つ喫茶店を傍に、アルバイトの安藤杏は今日も黒板にランチメニューを書く。こだわりのないことにこだわる彼女は、拘りたくなる相手に出会い、彼女との距離を縮めようとする。そんな出来事を知りもしない会社員の忍静江は恋愛に中指を立てている。恋愛を嫌悪しながらも婚活をしている彼女は、大好きな同居人が自分と結婚したがっていたことを知る。もみほぐし師の星野源希は誕生日の直前に彼女に振られる。自分の誕生日会を開こうと奮闘するが、誕生日を祝ってくれる人が中々見つからない。大学生の武部凪は恋人と一緒に暮らし、くだらないことで友人と笑い合う、なんとなく幸せな生活を送っている。そんな中、恋人の高校の友人が遊びに来ることをきっかけに、喧嘩別れした高校の友達のことを思い出す。
帰還前夜
原田 香林
<あらすじ>
山中明(15)は、菅原和香菜(15)に、春汐親方(55)が運営している相撲部屋への入門を勧められる。当初は誘いを断った明であったが、暴力的な父親・一郎(55)と一緒に暮らすことに嫌気がさし、ついに入門を決意。
明は部屋の横綱・桜ノ海と共に喧嘩を繰り返しながら、部屋での生活を送る。
しかし、あるとき春汐親方が急逝。残された部屋の衆は王獄部屋に移籍することになったが、春汐が全てだった桜ノ海は、そのまま引退してしまう。
明は桜ノ海のいない生活に物足りなさを感じ、稽古に身が入らない。そして部屋移籍後の場所で、脚に大怪我を負う。このまま相撲を取り続けるのは難しいのではないか、と悩む明。今まで相撲をとる中で得た仲間たちが明を助けようと、引退後の道を示してくれたこともあり、明は相撲を辞めて新しい道に行こうと思う。
しかしある朝。明が稽古場に降りて行くと、引退後姿を消していた桜ノ海が、なぜか明の元へやってきた。そして彼は大怪我をしている明に無理矢理稽古をつけ始めるのであった。
大島家
山田 浩貴
<あらすじ>
大島一家は4人家族で2階建ての一軒家に住んでいる。父の一郎はテレビ業界で働き、母のよし子はスーパーのパートとして働いている。姉の美沙は大学4年でサークル仲間とよく飲み会を開き、弟の理樹は高一の夏休み前に学校を中退している。4人はそれぞれの環境でそれぞれのトラブルを抱えているので家でもギスギスした空気が流れている。そんな空気を変えるために一郎は家族サービスをする。サービス自体を家族は求めていなかったけど、一郎にはそれしか家の空気を変える方法を知らなかった。あるとき、無理矢理に旅行を計画して北海道へ行く。4人が北海道へ向かう中、自宅では収れん火災が起こり全焼してしまう。4人は住む場所がなくなったので、それぞれバラバラに暮らすようになる。ある日、よし子が怪我をして入院する。お見舞いで久々に家族が集結する。4人はひとつの家に一緒に居たときには話せなかった話やずっと一緒に居たのに知らなかった話をして病室で盛り上がる。よし子はリハビリを頑張って来年一緒に花見することを誓う。数年後、大島一家が住宅展示場まで4人一緒に歩いていく。 完。
未来になれなかった夜たち
池上 泉
<あらすじ>
とある藩の家老の娘・宮村葉月(15)は両親を強盗団・菊正一家に殺され、助けてくれた吉河源正(52)の孤児院に引き取られた。復讐心を燃やす葉月は日々鍛錬する一方で、同じ孤児院に暮らす深緑 (15)に頼まれて便利屋を手伝う。
葉月の父の元部下・浅間豊衛門(30)も加わり、菊正一家を追う葉月。深緑も同じ敵に両親を殺されたと知り、復讐する気のない深緑と 衝突するが、葉月は源正と話す中で何故菊正一家を倒すべきなのか 考えを改め、深緑と仲直りする。
豊衛門は同じ藩の家老・松野恒彦(37)が菊正一家と繋がっていることを突き止め、元は葉月の父の部下だった常彦が、家老の座を奪う ために葉月の父を貶めたと睨む。 菊正一家の屋敷に乗り込む葉月たち。菊正一家と常彦に刑が下り、豊衛門は藩に帰る。葉月は深緑と共に孤児院に帰っていく。
砂を噛むような
菅野 真未
<あらすじ>
吃音症により対人恐怖症も患ってしまった主人公、新井雄二は長年仲良くしていたオンラインゲームのフレンドに片思いをしている。
また、ゲームの中では頼れる存在として見栄をはっていた。しかし、片思い相手である二宮夕陽と他のネット友達がオフ会を開くという話がでる。雄二は自分に自信がなく、参加もしたくなかったが、夕陽をとられたくないという思いから外に出る決意をする。
一方、もう一人の主人公である三田秀行は自分に自信を持っている大学生。順風満帆な生活をおくっていたが、ある日揉めていた同級生が自殺をしてしまう。その原因が秀行にもあるのではないかと周りから少し浮いてしまったタイミングで、父親が医療過誤で謝罪しているニュースが流れる。このことがきっかけで完全に孤立する。両親とは疎遠気味で一人暮らしをしている秀行はアルバイト先へと徐々に逃げてしまうが、後輩として入ってきた雄二を関わることによって人生の転機が訪れる。
大さじ一杯の嘘
野口 夏鈴
<あらすじ>
埼玉県の中学校には「さわやか相談室」という場所がある。
用途は生徒や親の相談対応、不登校生が教室復帰するための緩衝材のような場所として使われている。
元相談室登校の知香子(17)は進学校に通いながらピアノ教室にも通っている。
最近はピアノの発表会で祖母の憧れの曲を弾くことを期待されており、同時に祖母の期待に応えられなかった母からの嫌味に辟易している毎日を送っている。
知香子にとって期待と嫌味が悩みの種であった。
ある日、相談室登校時代の親友であった未真(17)を見かける。
知香子は彼女との思い出を追憶する。しかし彼女たちは絶交していた。
家庭内暴力や教室復帰によるすれ違い、そして後輩の思想により揺らぎ、切れてしまった彼女たちの絆を、知香子はもう一度つなぎ直したいと考える。
知香子は美馬の過去の発言から勇気をもらい、
ピアノの発表会で未真との思い出の歌を弾くのであった。
into the world
上野 詩織
<あらすじ>
とある人物が物語を作った。さらに、物語を動かす重要な存在として、六人の登場人物を作り上げた。物語の登場人物として作られた、シエル、ジョセフ、アイン、リコ、ルビー、ビベラ。彼らは様々な物語の中で生きていくが、どの世界でも、必ず破滅の道を辿り、そして世界が滅びてしまう。作者は、自分の代弁者となるヤヌハを登場させ、シエルたちに語りかけながらどうにかハッピーエンドへ向かわせようと世界をやり直すが、最後まで幸せな結末は訪れなかった。作者はついに新しい世界を作ることを諦め、最後に雪の降る世界が残った。作者の死とともに、最後の世界も終わりへと向かっていく。物語の世界が終わりを迎え消滅するまでの短い間だけ、シエルたちは、幸せな結末を迎えた夢を見るのだった。
君と見た世界
入澤 日南
<あらすじ>
家庭や学校に居場所を感じられないでいる中学生 の少女、夕梨花(14)は、学校にもあまりちゃんと通 えておらず、家に帰ってもどこか居心地の悪さを感じ ていた。どこにいても感じるのは疎外感だけ。日常に感じている鬱屈とした気持ちがいつも消えることはなく、どこか遠くに行ってしまいたいとさえ、思っていた。
そんなある日、SNSでアサヒ(14)という存在に出会う。アサヒはSNSで、「僕はただ、明日を迎えたいだけなのに」と呟いていた。自分と似たような気持ちを抱 えているアサヒの存在を見つけた夕梨花は、少しず つ、アサヒとメッセージを交わすようになる。メッセー ジのやりとりをしていくうちに、自分と似たような状況下にいるアサヒに、興味を持っていく夕梨花。アサヒも同様に、夕梨花に興味を寄せていた。そして2人は、行き場のない感情の行先を見つけるように、どこか遠くに逃げ出すことを決める。
あの星には恋がない
大木 奈々帆
<あらすじ>
今どきだが恋愛に対する考え方がステレオタイプな男子大学生の巧のもとに、美しい宇宙人・アステリが突如やってくる。個人的に興味のある地球の『恋愛』の概念を知りに来たというアステリに、巧は図らずも好意を持ってしまう。しかし文化を探っていくうちに、宇宙では幸福度が高いとされていた地球の人間関係の矛盾にアステリは気づいていく。恋愛や結婚に固執して焦る人や、恋愛以前に自分の趣味趣向を否定され自由に世の中を生きられない人との出会いを通し、何をもって『恋』なのか、またそもそも何かを『好き』になる上で恋情にわざわざ結びつける必要があるのか。一般論の幸せが、本当の幸せなのだろうか。どうしても本質を突き詰めたいアステリの純粋で多角的な言動 に、それまで当たり前と思っていた巧たちの固定観念が徐々に揺らぎ、少しずつ変わっていく。
Obliviates
宮川 悠之介
<あらすじ>
高校の卒業旅行に集まった幼馴染の長谷川ひろき、曾根田宗、山崎かずや、厚山あつし、小松純の五人は曾根田の運転で県外の温泉に一泊二日の旅行に行く、道中の車内では思い出話に大いに花を咲かせ気分ルンルンで旅館に到着、しかしその旅館はどことなく怪しい雰囲気が漂い5人の周りでも不可解な事象が起きる。
一日目を平穏に過ごした一行だったが深夜トイレに立った長谷川と厚山が突如現れた怪物に襲われ厚山が食べられてしまう。厚山とともにその記憶も失った4人は旅を続行、再び怪物に襲われる4人はなんとか山崎を道連れに怪物を撃退したかに見えた。
小松は戦いのさなか厚山と過ごした記憶を取り戻し、生き残った3人で帰ろうと主張するが長谷川、曾根田は記憶がないので小松の言っていることを信じようとせず、唯一の希望であった小松も怪物に食われてしまう。帰途につく長谷川と曾根田だが、また怪物の襲撃を受け曾根田が犠牲になってしまう。長谷川はただ一人生き残ることになる。