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論 文
映像表現・理論 [理論・批評専攻]
吉岡野々花
『イングマール・ベルイマン 女性の苦悩と男性の不在』

スウェーデンの映画監督、イングマール・ベルイマンは、一貫して男女間のコミュニケーション不全を描いてきた。しかし彼の眼差しは、その断絶が生む、より複雑な悲劇にも向けられる。それは男性不在の空間で、救いを求めた女性同士が互いを傷つけ合うという女性同士の連帯の不可能性である。本稿は、この二重の苦悩の構造を、身体、階級、そして精神分析の観点から解き明かす。
まず、出産や堕胎といった「産む性」の身体的経験がもたらす孤独と、社会的階級が女性間の連帯を阻む様相を分析する。次に「接触」や「視線」といった映像表現が、物理的近さとは裏腹に心理的断絶を際立たせることを明らかにする。
さらに、女性の苦悩の背景にある類型化された「男性像」の機能不全を探り、その起源を、ラカンの鏡像段階論を援用して少年の主体形成の失敗に遡る。不在の父と強大な母の前でのつまずきが、成熟できない男性性を生み、彼らが女性を「歪んだ欲望の鏡」として扱うことで悲劇が再生産される構造を論証する。ベルイマンが描いたのは、男性性の形成不全に根差す、救いのない冷徹な世界と、そこに僅かに残る愛である。
タグ:
Drama, 4年
本文は日藝博期間中、江古田校舎でお読みいただけます。
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