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「小津安二郎映画におけるシスターフッド−結婚を巡って」田辺こむぎ

<論文概要>

本論では、男性優位社会の中における日常的な家族の物語を描く小津映画の中には、どのようなシスターフッドが見て取れるのかという疑問から、『晩春』(1949)、『麥秋』(1951)、『お茶漬の味』(1952)、『東京物語』(1953)、『彼岸花』(1958)、『秋日和』(1960)、『秋刀魚の味』(1962)の7作品を取り上げ、小津映画におけるシスターフッドを提示する。具体的には、「結婚」という主題を軸に、女性がどのように連帯し、男性優位な社会に屈せず進んでいくのかを、当時の時代背景とともに映像やセリフ、仕草まで分析して考察していく。第1章では友人関係におけるシスターフッド、第2章では義理の姉妹関係におけるシスターフッド、第3章ではリメイク作品におけるシスターフッド、第4章では既婚女性におけるシスターフッドを取り上げる。結論として、小津映画におけるシスターフッドは、家父長制への抵抗を示す繋がりのことであり、特に、女性の聖域とされる二階や台所などの女性だけの閉鎖的な空間で繰り広げられるものである。また、小津映画では血の繋がりのないシスターフッドの方が多く存在しており、血縁関係のある女性よりも、友人や義理の姉妹や親戚という立場の女性との方が繋がりが深いと言える。


<卒論を終えて>

小津安二郎監督の映画は数多くの先行研究がされているため、自分が何か新しいことを論じることができるのか不安なまま卒業論文を書き始めたが、約8ヶ月ほどの長い時間をかけて、なんとか結論まで書き終えた時には、思っていた以上の達成感があった。各作品を分析することよりも、本論で取り上げた7作品をまとめて、結論を書く部分が一番苦戦し、何度も書いては添削をしてもらうという作業を繰り返す中で、改めて「世界の小津」とも呼ばれる小津の作品の深さを実感した。自分自身が大学に入ってから興味を持った小津と、ジェンダー問題を合わせたテーマで卒業論文を書くことができたことを嬉しく思う。

 

作品は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。

 

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