シナリオ
映像表現・理論 [シナリオ専攻]
倉山瑠来
『ノット・マイホーム』

会社員の佐藤貴史は、いつもSNS上で「理想の父親」を演じ、幸せな家庭をアピールすることに余念がない。念願の課長昇進を果たした貴史は、成功の証として「立派なマイホーム」を建てる計画に没頭する。その執着の裏には、俳優として世間の脚光を浴びる兄・和明への根深い劣等感があった。しかし、貴史が理想を押し付けるほど、妻の友希は夫の独りよがりな態度に冷め、息子の晴翔は父の期待に応えようと心を摩耗させていく。
ある日、友希の実家が彼女の父・啓造の借金の連帯保証のために差し押さえられる。啓造が失踪し、住処を失った友希の母・泰子は貴史たちの狭いアパートに転がり込む。当初、生活リズムを乱す義母の存在に疲弊していた貴史だったが、飾らない彼女との交流を通じて、次第にあるべき家族の姿を見つめ直し始める。
一方、友希は尊敬している職場の先輩・千尋から韓国での研修の話を持ちかけられ、幼い頃に抱いていた「海外で働く」という夢を再燃させる。友希が決意を込めてその話を貴史に切り出すと、「家族は一緒にいるべき」という理想を譲らない貴史と衝突し、ついに友希は離婚を宣告する。
そんな中、行方不明だった啓造が警察に保護され、彼も貴史たちと同居することになる。啓造からトランペットを譲り受けた晴翔は、自己を表現する喜びに目覚める。貴史もまた、義父母たちとの賑やかな暮らしに安らぎを感じ始める。そんな矢先、泰子と啓造に格安でアパートの一室を貸してくれるという話が舞い込み、貴史は焦る。義父母がいなくなれば、自分たちの離婚が一気に現実味を増してしまうと気づいたからだ。
引越しのために出て行こうとする義父母を、貴史はついにプライドを捨てて引き止める。なりふり構わない彼の本音に、友希は思わず笑い出す。それは、兄への劣等感や「立派な家族」という呪縛から貴史がようやく解放された瞬間だった。
貴史は友希の夢を尊重し、彼女を韓国へ送り出す。離れて暮らすことになっても、それぞれの場所で、彼らは自分たちらしい家族の形を見出していく。
タグ:
Drama, 4年
本文は日藝博期間中、江古田校舎でお読みいただけます。
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