『天気雨のとおりみち』小嶋 剣信卒博映画2023年3月4日読了時間: 1分大正11年の東京。石神井に住む狐の少女は、おばあさんの言伝を持って王子のお稲荷様へ向かいます。一人で出かけて心細い彼女の空模様は天気雨。行き合いの空の下、足を止めてしまった彼女の前に傘の少女が現れて……。※本作は3年生の作品になります※ ご感想はページ下部のコメント欄までお願いいたします。▷ 映像表現・理論コース [映像専攻] の映像作品 About 映像表現・理論コース
かなりアクの強い作品にも関わらず、最後まで目を離さずに見ていられるのは流れるような口上と決めるところは決める展開のメリハリのおかげなのでしょうか。アニメーションの中では長尺の6分強を背景・ボイスアクトに至るまでほぼ独力で走り切ったのは凄いことで、それだけの熱量を大正時代の石神井川での出来事に注げるという点だけ見ても特筆に値すると思います。いわゆる「好き」を煮締めたような作品だと思っていたために、最後の狛狐のカットには虚をつかれました。
はたして「何かを描く」目的無くして成立し得ないアニメーションにおいて、車窓の風景から始まる作品はどれほどあるのでしょうか?これは学生の作品でありながら「語る」という事とちゃんと距離を取った表現であると言うことができます。こだわって描かれたキャラクターと背景が分離しすぎているようなのは好き嫌いが分かれるところだと思いますが、音楽や効果音の使い方も上手ですし、何よりも普段カメラを持ってはおもに風景を撮る者として、傘に当たった雨が跳ね返って細かい霧のようになる層を描けてしまう作者にちょっと嫉妬します。