<論文概要>
1950年代当時に黒澤明と並んで国民人気の高かった木下は、現在ではその知名度に差が開いている。時代が進むにつれて木下映画が国民に選択されなくなったため、映画界から存在感が薄れてしまった。そうなった理由は木下の作家像の曖昧さにあると考えた。本稿では木下の作家像を「女性の描き方」を中心に考察し、明らかにしていく。
第1章では『花咲く港』を分析し、木下のルーツを探る。第2章は『陸軍』、『大曽根家の朝』と『破戒』から木下の「戦争と国民」の描き方を見る。第3章と第4章では『二十四の瞳』、『お嬢さん乾杯』と『カルメン故郷に帰る』から木下の描く女性像を分析し、『夕やけ雲』と『惜春鳥』からは木下の描く男性に注目することで、作家像に迫る。以上の方法から、これまでは、彼の持つセクシャルマイノリティ的な個性と描かれる女性の幅広さが作家像を曖昧にさせていたことが判明した。そして木下恵介の作家像は、人間の弱さを美しさとして変換し演出する力にあると考えられた。
本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。
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