『みたい』佐野 由綾君に見えて僕に見えないものってなんだろう。※本作は3年生の作品になります※ ご感想はページ下部のコメント欄までお願いいたします。▷ 映像表現・理論コース [映像専攻] の映像作品 About 映像表現・理論コース
君に見えて僕に見えないものってなんだろう。※本作は3年生の作品になります※ ご感想はページ下部のコメント欄までお願いいたします。▷ 映像表現・理論コース [映像専攻] の映像作品 About 映像表現・理論コース
プリミティブな形状のマスクを使ったアニメーションは、普通であれば「AEの技術が発展途上なのね」で済ませてしまうところですが、本作は独特かつ明瞭なその使い方(雑踏をトランジションがわりに使った黒い直方体、アスファルトに落ちる傘の影を表したグレーの円、人混みに消える一人と一匹を包む暖色の楕円)と、全編を支配するかわいらしくも寂寞とした世界観との相乗効果で、ただキーフレームを結んだだけの等速直線運動に「未熟」の一言で終わらせてしまえない何か迫力のようなものが宿っているように思えます。おそらくご本人としてはうまくいっていない部分の方が多いのでしょうが、さりとて「ここをこうすればもっと良くなるよ」と気軽に言えない独自の路線を持つ気配が既にあり、もしパウル・クレーがAdobeCCを契約してたらこういう動画を作るのではないだろうか…などと思わされてしまいました。このまま進んでいってほしいなと思います。
一見この作品自体に特別な技法は見当たらないですが、実はとてもストーリーテリングの力があることがわかります。パステル調の背景と鉛筆で塗り込められたような雑踏との対比(透明度の調整によって交差するときの様子も良いです)女の子の瞬きの回数や雲が色々な形に変形しているのを女の子が見上げない、置かれた傘の柄がコッツともたれかかるところなど。少女と猫の話かと思いきや二人(一人と一匹)を取り巻く世界を見事に演出しています。
ふと「この少女は目が見えないのではないか」と思って作品を見直すと作品の味わいが一層深くなります。