<論文概要>
本論では、富野由悠季の監督した劇場作品から富野の思想を読み解くことを目的とする。分析の対象は連続アニメーションを劇場用にリメイクした5作品15本とし、また、富野の作品で常に大きな存在感を持ち、リメイクの過程で前景化される〈母〉の存在に着目する。なお、ここでの〈母〉とは実母のみではなく、集団における母親や、母親代わりをする少女たちのことも指す。
当初、少年を戦士へと成長させる存在であった〈母〉たちは、物語の主張そのものを担い、富野の思想が最も反映された存在となってゆく。最新作で、戦いの後の、未来を作っていく存在としても描かれた〈母〉たちは、時代を経るごとに、必ずしも男を必要としなくなり、〈集団の母〉として政治の中心にも立つようになるのだ。
このように変化していくなかでも、〈母〉に表象される富野の思想に一つだけ変わらないものがある。それは〈反戦〉だ。劇中、戦争の負の側面を強調したり、争いを止めるため奮闘したりする〈母〉たちには、現実世界で未だ成し得ない、戦争のない世界への願望が投影されてもいるのであった。
本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。
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