<論文概要>
成瀬巳喜男は戦前から数多くの作品を手掛けているが、彼の評価は常に女性表現についての評価がほとんどであり「女性映画」の名手として、高い評価を得ている。私は本論文で、「女性映画」ではなく「家族映画」に焦点を当てて成瀬映画の演出を再評価することを目的とする。成瀬は自身の作品で、同ショット内にて複数の人物がショットを共有し合う女性的表現と特定の人物がショットを独占してしまう男性的表現を巧みに使い分けている。「家族映画」では、夫婦や親子の対立によって上記のそれぞれの表現が共存しあう。それぞれの表現が共存し合う背景には、夫婦の対立を妨げる緩衝材の役割を持つ子供の存在や夫婦が与え合い、返し合う「贈与」などの行為が表現されている。そうした行為を通過することによって、「家族映画」がどちらかの姓に偏らない絶妙なバランスが保たれる。そのため、成瀬の「家族映画」は最も中性的であるとしている。
本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。
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