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『バターが溶けたら』草刈 邑依

<あらすじ>

 暑い夏の夜、三森万智日は駅の向かい側のホームにいる女性・緋村あかりをスケッチしている。それに気がついたあかりは、万智日を呼び寄せ、バーに連れて行く。あかりは官能小説家で、テレビでコメンテーターもしている。一方、万智日は美術大学で油絵を専攻する学生だ。あかりは万智日を家に連れて行き、ホットケーキを作った。あかりは心臓の持病のためにセックスができないこと、その代行を万智日にしてほしいことを伝える。万智日はいっとき逡巡するが、ホットケーキを条件に、その『仕事』を受け入れる。

 あかりの注文で身なりを整えた万智日は、初めての『仕事』をする。セックスのできないあかりにとって万智日の報告にはリアルな臨場感が必要だ。初回の『仕事』を通して、万智日はあかりの身体と精神の結びつきについての考えをしる。

 あかりは、美術予備校でアルバイトをしている。そこの職員・桃井守は万智日に好意を抱いている。二人で食事をとってみると二人の相性はいい。守は、自分が子持ちであることを考慮した上で、好意を伝える。万智日は、たまに食事をするところから始めようと提案し、守も賛成する。

 万智日は、卒業制作を控えた4年生の秋を迎えた。自画像を描くことへの不安を感じる一方で、桃井親子とのたこ焼きパーティが決まる。浮かれる万智日をよそに、あかりは『仕事』を促す。女性との一晩の後、万智日はこの『仕事』や、あかりとの関係性について不満を感じる。一方的なあかりへの親しみをかなしく思ったまま、万智日はあかりの家を出る。桃井親子との楽しい時間の後、素直に守への気持ちを表現できない万智日。

 家に帰り、あかりが死んでいるの発見する万智日。呆然の中、警察からの取り調べで、あかりについて何も知らない自分を思い知らされる。失意の中で向かったあかりの告別式で、あかりのマネージャーの生田に出会う。生田を通してあかりからの想いに触れる万智日。

 あかりの家でホットケーキを作って食べる万智日は、泣きながらも制作を始める。自画像を塗りつぶして描いたのは、出会ったあの日に描いていたスケッチと同じ構図。晴れた顔の万智日は、絵の中のあかりを見つめている。


 

本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。


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