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『一生一石』根岸 千尋

<あらすじ>

 石を愛する女子高生と、その周囲の人間を描いた青春群像劇。

優柔不断で熱中するものが何も無い春樹。自分の気持ちを言えない桃香。SNS中毒の美術部員の蓮。親と不仲で不登校の咲良。彼らはそれぞれ悩みを抱えていた。

 春樹は、進路について悩んでいたある日、同級生の美波に一目惚れする。彼女は石をこよなく愛し、探石と呼ばれる趣味に熱中するクラスでも異質な不思議ちゃんだった。

 桃香は家が貧乏であるが仲間はずれにされないために、無理に友人に合わせていた。美波と出会い、『自分の一生一石を見つけたい』と語る美波に惹かれていく。蓮はSNSで人気の彫刻家。評価されるものを作れば『作品に愛がない』、好きな観音菩薩を作れば『学生らしくない』と笑われる。蓮が捨てた観音菩薩を美波が拾ったことをきっかけに、美波に彫刻を教えることとなる。咲良は美波の祖父・重明と出会い、心の拠り所となるが、一方で咲良は血の繋がる家族に愛される美波に嫉妬心をぶつける。熱中症で倒れた美波を介抱したことをきっかけに、春樹は美波の気持ちを知るため、自分を変えるために、一度諦めたギターを手にする。桃香は母親に負担をかけまいとバイトをしたいと懇願するが、自分自身を否定される。そして仲間はずれを恐れた桃香は美波と距離を置く。

 突如、美波が学校を休む。春樹たちは学校を飛び出して美波を探すが、呆気なく見つかる。河原で石を探していたのだ。役に立たないことに真剣な美波の姿が、四人にはなによりも輝いて見えた。一度美波と距離をとった桃香だったが、川の中で諦めず必死に石を掴み取る美波に心打たれ、自分の気持ちを母親に伝える。その後、美波に声をかけた春樹は、『美波のようにやりたいことはまだ見つかっていないが、自分の一番を見つけるまで頑張ってみる』と宣言する。

 変わらない日常の中で、少しだけ変化した四人の日々。美波は変わらず今日も一生一石を求めて、石を探し歩いている。


 

本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。


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