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『越へる背中に見ゆ』三保 寛大

<あらすじ>

 日本は室町幕府の権力の低下によって各地の領主が力を持ち、武力で支配する戦国時代が幕を開けた。安芸を治める毛利元就は「戦わないための戦い」を理念に掲げて自身の領土拡大と繁栄を繰り広げていた。ある戦の帰りに復讐を口にする少年・半田治正が現れる。治正は元就に命を賭した父・義正の死に対して行き場のない怒りと悲しみをぶつける。

 父の死と正面からぶつかることで治正は毛利軍の一員として再び元就に命を賭けることを決める。まだ幼い治正は10年の年月を経て児玉就忠の訓練の元1人の武士として成長を遂げる。

 毛利の領土や勢力も徐々に広がり順調に思えた。そんなある日、尾張を治める織田信長の存在が台頭した。そんな織田軍が西へ攻め入っていると耳にした日本を統一することを目標とする元就は織田との衝突を予見し、総力戦として先手を打つ。

 治正を大将とした毛利軍は織田軍の撃退とともに武田信玄が治める信濃の占領と二つの目標を持って東へ足を進める。

 しかし待っていたのは予想外のことばかりであった。元就が練った策を遂行するか自身の機転を尊重するか悩んだ治正を救ったのは同じ元就の家臣である吉川元春であった。戻ることが元就への侮辱であるという元春の言葉を飲み込み、治正は元春を安芸に帰して前に進み続けた。

 無事に信濃の占領の任務を終えた治正は本陣より早く安芸へ帰還する。安芸に着いた頃には元就は元春によって命を奪われていた。理解が追いつかない状況に立たされた治正は仲間の支えもあって再び刀を手にすることを決める。


 

本文は日藝博期間中、江古田校舎で読むことができます。


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